ツイッターで書いた話のつづきなので、ここだけ読むと分かりづらいかもしれません。
天体望遠鏡ウルトラムーン
https://www.gakken.jp/science/mag_kagaku/kg_presents/30_ultra/
国立天文台望遠鏡キット
https://www.nao.ac.jp/study/naoj-tel-kit/
望遠鏡の話に興味がある方がどのくらいいらっしゃるのかわかりませんが、なんとなく書いておきます。写真撮影用(スマホではなく一眼レフ等を使う)の場合は話が別になるのですが、自分の眼で見ることを想定するなら、口径10cmくらいの本格的な望遠鏡を買っても、上にリンクを貼った学研や国立天文台の組み立ててキット(有効径46mmや口径50mm)でできることと実はあんまり変わりません。
口径が16cm以上、できれば20cmクラスの望遠鏡を持って、街明かりの少ないこところに行かないと(もしくは現地で借りる)、ほとんどの星雲星団は見えないからです。なので、安易におすすめできる安価な組み立てキット望遠鏡で良いのが欲しかったんですよね。そんなところに現れたのが、学研の「ウルトラムーン」だったので、私はこれの評価がやけに高いわけです。
望遠鏡の性能は主に口径で決まります。倍率は添え物です。他にレンズまたは鏡の種類も写真用の場合は大きな影響があるのですが、眼で見る用の場合は、とにかくまずは口径です。ただし、20cmを超えてしまうと、車での持ち運びすら難しくなるので、20cm付近が現実的なおすすめになってきます(お値段的にも取回し的にも)。
しかし、見たい天体を望遠鏡に導入するのには練習が要ります。自動導入機能のある望遠鏡も売ってますが、事前設定が実は難しいので、これも練習が必要です。なので、16cm以上の本格的な望遠鏡を買う場合は別途いろいろ考えないといけないのですが、話が逸れるので今回は置いときます。ちなみに架台(これが超重要)と合わせて20~30万円は覚悟してください!
(ドブソニアン……っていうツッコミを入れられる人は詳しい人なので、まぁそっとしておいてください)
で、倍率は重要ではないと書きましたが、一方で倍率を上げられる限度も口径で決まります。基本的に口径のmm数が倍率の限界です。50mmなら50倍ですね。これを超えると暗くぼやけていって見えなくなるのです。で、この時点でお気づきの方はいらっしゃるかと思いますが、国立天文台の組み立てキットの66倍はこれを超えちゃっています。「あかんやん!」と思いそうですが、用途を考えるとそうでもありません。
何事も例外がありまして、対象が明るいものである場合は、口径のmm数の2倍くらいまでは大丈夫です。口径50mmなら100倍ですね。明るいものの例としては月と肉眼で見える惑星ですね。あ、もちろん太陽は見ないでくださいね。失明します。またこの太陽に近い水星も危ないのでやめておいたほうがいいです。
望遠鏡の倍率はアイピース(眼で覗く側のレンズ)を付け替えることで変えることができます。ちなみに星雲星団を見るときの倍率は40倍くらいを使うことが多いです。実はあんまり高倍率ではないのですね。では高倍率を使いたい対象は何かとなると実は月や惑星になります。模様や木星の大赤斑を見たい場合は150倍以上にします。
で、組み立てキットで見られるものはこのあたりの明るいもの+αくらいなんですよね。+αはすばる、オリオン大星雲、アンドロメダ銀河、アルビレオ(二重星)あたりですね。この+α勢は倍率はあんまり要りません。15~25倍くらいで十分です。というより二重星以外は、倍率を上げると全体が見えなくなるのでかえって見づらくなります(学研のキットはここに合わせてありますね)。
さて、ここで最初に書いたことと矛盾が出てることに気づいた方もいらっしゃるかもしれません。あれ、口径10cmにすれば200倍で月や惑星を見られるのではと。それはそうなんです。なので、無意味ではないのですが……でも見られる対象はほとんど増えません。まぁここにうん万円、場合によってはうん十万ものお金を出せるかっていうたいへん生々しいお話になってまいります。
ということで、amazonで2000円ちょっと買えてしまう学研の組み立てキット望遠鏡「ウルトラムーン」、安易におすすめできる入門用としてはほんと優秀なのです(送料含めると6000円近いですが、おそらく国立天文台のキットも)。
ただ……初心者が望遠鏡を手持ちで、見たい天体を導入するのは難しいので、できれば5000円前後以上のある程度しっかりカメラ三脚(あんまり安物だとぐらつきます)と3000円くらいの自由雲台があるとすごく見やすくなります。学研の方だと本体より高いやんけってのは気にしない方向で……。
国立天文台キットの66倍が高倍率すぎるというのはこのへんもあります。手持ちではまず見られないと思ってください。少なくとも三脚必須です。さらに自由雲台付きでも月以外はなかなか見たい天体に合わせるのは難しいと覚悟してください。
余談ですが、学研に対して国立天文台キットの66倍があるのは土星の輪っかを大幅に見やすくはなります。ただこれも50倍あれば十分見えるので……導入難易度を考えると、ちょっと高倍率過ぎませんかね。